平成30年 病院設立69周年記念式典挨拶

 

 

病院の69回目の設立記念日は、エスポアール城西の移転の記念日にもなりましたので、病院と老健の新しい関係についてのお話をしたいと思います。

平成元年に弥生ヶ丘が設立された時、病院併設としなかったのは、地域の利用者の精神科に対する偏見を排除することが目的の一つであったと聞いています。その狙い通りに弥生ヶ丘は、独立型の老健として幅広く地域住民や医療機関に利用されるようになったのですが、この度の建て替えに際しては病院の隣接地が選ばれました。これは単に運営の効率化のためだけではなく、設立当初の考えとは反対に、精神科病院との併設に新たな価値を見出せる時代となったということも大きな理由です。

この30年の間に、精神科や高齢者を取り巻く環境は大きく変化し、認知症を中心に高齢者の心のケアは飛躍的に重要視されるようになりました。また、ストレス社会の中で心の病気を抱えた人、加齢とともに障害を抱えて介護が必要になった高齢者、ともに私達誰もがなり得る社会的弱者であるという理解も進んでいると思います。

そういう中で、弱い立場の人の視点に立って、当事者の望む生活をともに目指すというリカバリー志向の病院と、同じように在宅復帰を目指す強化型の老健は、同じ目的と姿勢を共有していると言えるのではないでしょうか。地域から期待されるであろう認知症ケアに関する連携のみならず、同じ目標を持つ機関同士が、お互いの努力や工夫を理解し、認め合い見習い合うこと、それが併設の新しい意義であり、それによってそれぞれの魅力が一層高まるものと期待しています。

この新しい意義に沿い、昭和48年に策定された病院理念を、改めて法人全体の共通理念として定め直されることになりました。

「訪れる人には安らぎを 留まる人には愛を 去る人には希望を」。

これから病院と老健、そして地域ケアセンターは同じ理念の下にある兄弟施設です。過去のイメージにとらわれることなく、まずは敬意と興味を持って、お互いをよく知ろうとすることから新しい関係作りを始めていきましょう。