令和6年度 病院目標

変える×変えない=

人権への意識

部署間連携

リカバリー志向

 

令和6年度病院目標について  ~ 変える×変えない= ~

 

 

精神科病院は変わらなければならない。

もう何年も言われ続けてきた言葉だ。当院も「入院」ばかりが中心にならない医療を思い描きながら、心理社会的療法や種々のリカバリー志向の活動といった「地域生活の支援」へ軸足を移そうとはしてきたが、いよいよ本格的な変革を始める時期が近づいてきている。

要因は複合的で、圏域の人口減少と高齢化、物価高騰、医療費抑制といった社会状況の変化はもちろん、後回しにされがちであった患者さんの権利(人権への配慮、医療安全、情報共有、社会参加の促進など)への意識の急激な高まり、外来ニーズの増加と多様化、長期入院需要の減少など、精神科医療の対象そのものの変容も大きな要素となっている。

世間からの忖度を受けているつもりで良かれと続けてきた精神科病院のスタイルが、「人権」をキーワードとして、いつの間にか的外れや批判の対象になっていることに気づかねばならない。

一般的に精神科病院の変革の方向性としては、慢性期病棟のダウンサイズと、その人員やスペースを急性期治療やアウトリーチ活動、リハビリテーションの拡充に充てていくことが謳われているのは承知の通りだが、変えなければならないのは形よりも私たちの意識であり、主客転倒させた考え方であろう。あたかも患者さんや地域よりも病院の方が強くて高い立場にいるというような発想は捨てるべきで、むしろその逆の意識を持ちながら、今後の進むべき方向や業務の質の向上、個々のスキルアップについて思いを巡らせてもらいたい。その上で、各部署で点になりがちであった患者さんへの関わりを、患者さんが望む生活への線として繋げられるように「連携」を心がけて欲しい。これらは従来からの病院目標である「リカバリー志向」の基礎にあるべきもので、その方向への変化は病院の存在意義と持続可能性を高めることになるだろう。

一方で、変えてはならないことや変わらずにいたいこともある。

個人的には、目指している責任の果たし方、職員たちや圏域への想い、高見病院の時代から引き継いだ心意気のようなもの(言葉にはしにくいけれども)など。医療従事者になることや病院で働くことを選んだ皆さんにも、それぞれに働く上での思い入れや志があるだろう。一人ひとりが信念を守りながら病院の変化をイメージする、あるいは、それを変えないための変わり方を考えて目標設定をしてほしい。同じロジックから、部署や職員の数だけたくさんの多様な目標や選択肢が生まれるなら、それは「病院自身のリカバリー」の心強い足がかりになってくれるはずだ。

 

カテゴリ:病院長のご挨拶