40年の長い年月に亘り「津山しらうめの会」が数多くのご苦労を乗り越えて活動を継続されてこられたことに深く敬意を表します。

結成当初の活動の困難さは想像に難くありません。当時の、心の病気を抱えることに対する世の中の仕打ちや、数少ない味方であるべきはずの精神科医療の実情に落胆されたご家族の心境が、厳しい寒さに耐えて春を待つ「「白梅」の名に込められていると思えば、その哀切さが心に沁みてきます。

未だ険しい道のりの途中ではありますが、当時に比べれば、精神疾患も身近な病気として認識されるようになり心のケアの重要性も広まってきています。昨年起きた相模原のショッキングな事件は、今なお社会の根深い差別や偏見をあぶり出しましたが、その後に巻き起こった「人の存在の価値」の議論の中には勇気づけられるものが多くあり、時間はかかっているものの少しずつ社会の成熟も進んでいるような気がします。

精神科医療にも大きな変革の波が押し寄せています。新しい考え方のリハビリテーションや薬物が広く利用されるようになり、「症状を抑え込む」ことを優先していた従来の考え方から、「当事者自身の望む生活の実現」が治療の目標となってきました。また、長期入院を認めず地域生活の援助を奨励するという国の方針は、更に現実的な政策として打ち出されていくでしょう。

当院でも、新設の地域ケアセンターを中心に、当事者・家族心理教育、就労スキル、自己対処力向上のためのプログラム、ピアサポーターの養成、訪問活動の拡大など、本当の意味で当事者を主役とした援助のための活動がスタートしました。

これまで、場合によってはご本人やご家族の望むことと、病院が提供できることとの落差があり、お互いが辛い思いを抱えることもあったと思います。今後は、ご本人がしたい地域での生活を一緒に考え、目標に向かってともに歩んでいくという姿勢をお互いが共有することによって、家庭と病院の距離が縮まっていくのではないかと期待しているところです。

最後になりましたが、会の益々のご発展と会員の皆さまのご健康を心よりお祈りいたします。「白梅」は暖かなひだまりの中の安らぎのシンボルとなっていくことでしょう。このたびは結成40周年本当におめでとうございました。

平成29年12月