令和3年度病院設立72周年に寄せて~病院の未来を考えよう~

 今年も創立記念日を迎えることができました。新型コロナ感染症蔓延の下で、張り詰めたプレッシャーに耐えながらの職員の皆さんの尽力に対して感謝に堪えません。出口が見えないトンネルの中で、利用者や職員の皆さんと一丸となって対応してきた経験は、この先の更なる困難を乗り越えていく力になってくれるでしょう。

 これから病院は、依然として幅広い地域からのニーズを抱えながらも、職員数や入院者数の減少というジレンマに直面していくことになります。地方の人口減少が急速に進み、相変わらず入院中心の精神科医療制度が続いている限り、病院の在り方の刷新は避けられない大きな課題です。

 小さくなっていく足場の上では、何かを手放さなければいけません。何を残すために何をするべきなのでしょうか。私たちの病院の強みは何でしょう。

 毎日100人を超える外来診療、その中での子供・発達外来、認知症、依存症、家族のサポートも重要な活動です。措置や応急入院、休日夜間の救急対応、医療観察法への協力やクロザピン管理も県北においては欠かせません。心理教育や認知リハ、個別の就労支援、アウトリーチも拡充していきたいですし、何より意欲のある質の高い職員たちと一緒に働き続けたい。

 こういった強みを更に磨いたり、新たな魅力を作り出してアピール力を高めることも一案です。医師の派遣や入職希望者を待つばかりではなく、積極的に人材を確保すること、そして今いる働き手を厚遇することも必要になります。それでも縮小が必要になるなら、苦渋の決断で業務の取捨選択をしていくしかありません。注力すべきはどこでしょう。あるいは入院ニーズに合わせて、より福祉的、より慢性期施設的な病院に変わっていくべきなのでしょうか。

 病院の行く先も、コロナ禍と同じく未だ先を見通すことはできません。不安に押しつぶされるのではなく、色々な意見に耳を傾け可能性を探る貴重な期間だと捉えれば、立ち止まっているように見えても成長することはできます。然るべき時が来れば、胸を張って一歩前に踏み出せるよう、たくさん悩んで力を蓄えていきましょう。

 73年目も宜しくお願いします。今後の病院の姿に関する皆さんの提案やチャレンジを歓迎します。