設立記念式典挨拶 ~病院理念の新しい解釈~

 

昭和24年の設立から68回目の病院設立記念日にあたり、最近考えていることをお話をさせていただきます。

 ちなみに昭和24年というのは、GHQが日の丸の掲揚を許可した年で、他には湯川秀樹がノーベル賞を受賞、藤山一郎の青い山脈が流行した年らしいです。かなり歴史の重みを感じますね。

 この病院の長い歴史に思いを馳せるとき、私はいつも、たくさんの先輩方の思いを引き継いでいかなければと考えてきました。それは、病院理念にあるように、社会的に弱い立場の患者さんのために安らぎと、人間愛と、希望をを与えられるように力を尽くす、そういう病院の伝統を守っていかねばという思いです。

 しかし最近は、こういう意識を少し変えなければいけないのかとも考え始めています。

 精神科病院が、冷たい世間から患者さんを守ってあげるという保護者的な感覚は、いつの間にか私たちを社会の変化のスピードについていけない時代遅れにしてしまって、患者さんの挑戦や成長の機会を奪い、結果として長い入院期間、過剰な行動制限が社会から非難される一因になっているような気がします。

 これからは病院を利用する患者さんが本当の意味で治療の主役になっていく時代です。患者さんに対して病気や治療に関する専門的な情報をしっかり提供しつつ、患者さんとともに試行錯誤して、患者さん自身が目標やゴールを自らが見出し達成していくためのお手伝いをすること、それが新しい時代の精神科病院のあるべき姿勢でしょう。

 「安らぎや希望は私たちが一方的に与えるものではなく、愛を持って患者さんと一緒に見つけ出していくもの、それができる病院であれ」いうのが私の病院理念の新しい解釈です。

 先日、震災直後に支援活動を行った宮城県の南三陸町を訪れて、守るべきものや変わりゆくものも全て引き受けながら前に進んでいく、人の強さというものに強い感銘を受けてきたところです。69年目を迎えた私たちの病院も、私たちの力で、利用者の皆さんから70周年を心から祝ってもらえるような病院にしていきましょう。

  

2017年10月2日